そのひとことが、言えない不幸

外出先でさっとメシ食おうと、つけ麺屋へ入った。冷えた麺てあんま好きじゃないのであつもりだいじょぶですか?って聞いたら店員が「ハイッ!」って。ひとあんしん。

しばらくして「つけ麺中盛りのお客様、お待たせしました!」って言うんだけど、俺のなのか、俺の隣に座ってた人のなのかでわかんなくて、店員もどっちだっけ?みたいになってる。ああ、じゃあ俺の方が先に入店したから、俺かな?ってことでつけ麺受け取ったんだけど、麺、キンッキンに冷えてんのな。

で、隣の人のつけ麺、「お待たせしました!つけ麺中盛りです!」って出てきた。麺、ホッカホカ!湯気立っとる!

受け取った隣と、俺。ふたりともおや?って顔してる。どうやら、逆じゃない?と。

ただね、一回受け取っちゃってるもんだから、交換しませんか?って言うのが、果たして正解なのか、って話ですよ。頭がフルスピードで回転する。だが、こんな時の正解事例を俺は持ち合わせちゃいなかった。どうする、どうする!?

で、ちらっととなり見たら、完全に目が合った。向こうも困惑している様子で、ラーメン屋でおっさん2人、どうする!?って顔してる。

先手を切ったのは隣人だった。もういいや!みたいな吹っ切れた感じで麺を貪り始めた。こうなったら、俺はこの氷のように冷えた麺を食べるしか選択肢がない。

何もなかったかのように麺を喰らうふたり。でもふたりとも、食べながら、こんなはずじゃなかった、て顔してる。なんか、すげー損したー、って顔してる。「かえっこしませんか?」その一言が言えなくて、冬。