おなかに赤ちゃんがいます、の着地点

結構混雑している電車に、運良く座れた。やったー!

 

二駅ほど進んだところで、自分のななめ前に「おなかに赤ちゃんがいます」っていう例のキーホルダーをつけてる女性が立ったよ。気持ち、おなかがふっくらしているかも、くらいの。あ、座りますか?って言おうとしたその瞬間に、いやまてよ、と。

まず俺の目の前に「もう辛い、明日会社行きたくない、休みたい」感満載のおっさんが、くたくたで立ってる。女性の目の前には、デカいオバちゃんがツムツムしてる。めちゃくちゃ高速に、指動かしてる。

 

これさ、俺がその妊婦さんに席を譲るってことはだよ?目の前の死にそうなおっさんを押しのけるということだし、本来席をゆずるべきツムツムババアに「本来お前が席譲るとこやけどな!」ってことを知らしめるみたいなもんじゃない?

いや、おっさんとツムツムババアが俺に文句言うのは良いんよ。うるせえ!窓際以上リストラ未満!とか、何がツムツムしや!お前が詰んどるわ!とか言って応戦すればいい。けど、そんなの妊婦さんが気を使うに決まってるじゃない?そんなモメ事の後に空けた席に座るストレスよ。

 

いや、妊婦さんってのは本当にたいへんなんだ。だからぜひ座って欲しいんだけど、しょーもない心労をかけるわけにもいかなくて、グムー!

 

結果、歯を食いしばって、何も言い出せず。無常にも進む列車。俺は、ちっぽけで、あまりにも無力だ。無力だったんだ。